昨年1月の地震で大きな被害を受けた能登半島の様子を伝える「能登『あれから1年』展」が、東京都墨田区の「電気湯」で開かれている。浴場に飾るのは、石川県珠洲市の銭湯「海浜あみだ湯」などで聞き取った住民の声や、能登の風景写真だ。湯船につかり思いをはせることで、300キロ離れた二つの地域がつながる。
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「被災の度合いは現地でもグラデーションになっている。一つの復興ビジョンを掲げるだけではうまくいかない大変さがある」。1月中旬にあった企画展のトークイベントで、発起人の浅見風さん(23)らが現地の状況を説明した。
「みんな自分の土地にいたい」住民らの声 浴場に展示
浅見さんは2021年に能登を徒歩で巡ったことをきっかけに、昨年の地震後は現地へ通い、大工仕事のボランティアなどをしている。展示は、浅見さんを中心とした若者の有志が企画。地元の住民や支援者らから地震の前や直後、その後の暮らしなどを聞き取って数百字にまとめた記事や、アンケートのパネル約50点、震災前後の街の様子を撮った写真約200点を浴場に展示する。
「家の中でダーっと瓦礫(がれき)が落ちてきて、そしたら息子らは、今、津波警報が出とるから、来るぞ―!って言って高台の上に逃げてんわ」「みんな自分の土地に居たいっていう気持ちの人おってやさかいね、かわいそうやね自分の屋敷とか、みんな自分の山もいっぱい持っとる、でもこんなん誰も欲しがらん」
聞き書きの一部はあみだ湯でメンバーが取材した。浅見さんは「銭湯は暮らしに不可欠な場所。深く傷ついた被災地の側面だけでなく、能登での暮らしも知ってもらえるようにした」。記事は湯で壁に貼れるパネルに印刷。読みたい人が手に取って読めるよう工夫した。
セーフティーネットとしての銭湯に共感
海浜あみだ湯は震災直後の1…